学校から次の内容のプリントを配布された。(一部省略した箇所がある)
個人持ちモバイルコンピュータの利用についての注意
最近、一部の生徒が休み中などに、ゲームなど学習以外のコンピュータ利用を行っているように思われます。
生徒の皆さんに以前から伝えていることですが、個人もちモバイルコンピュータを校内で利用しているのは、学習活動に活用していくためです。そのため、個人持ちモバイルコンピュータの学習以外の使用(ゲームサイトへの接続やデータの再生・保管など)を禁止しています。
(略)
今後、抜き取り検査を行うなど、皆さんのモバイルコンピュータをチェックするかもしれません。検査の状況によっては、コンピュータの一時預かりや家庭謹慎などの厳重な指導を行うことがありえます。
(略)
コンピュータの利用が皆さんの学習の妨げにならないようにし、学習活動に有効に使っていくことを望んでいます。
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私が通っている学校は高度情報化による情報氾濫に混乱しないようにするため、確かな情報処理活用能力を身に着ける、という名目で入学者は全員指定の無線LAN付モバイルコンピュータを購入する必要がある。また、校内の幾箇所にも設置された無線LANアクセスポイントより常時インターネットに接続できる環境が整っている。これにより、調査レポートや不明瞭な事象に対して正確な情報をインターネット上から検索することができ、情報活用能力が身に着けられるようになっている。
然し最近、そういった“学習用途への使用”をせずに“娯楽用途への使用”を行っている生徒が非常に大勢いるとのことで、今回このようなプリントが発行された次第である。
「モバイルコンピュータの使用用途は学習目的のみに限る」という事項は、各自コンピュータを受け取る際に必要な使用許諾書類に印を押して同意する。ここでコンピュータの使用目的は使用許諾書類と捺印による法的拘束力を以って学習用途のみに制限されることとなる。よって、使用許諾書類に捺印しコンピュータを受け取った者は、これを遵守する義務がある。
然し生徒はこれらの目的以外に、音楽やゲームといった娯楽性の高いデータを閲覧・視聴・保管している。これは捺印による法的拘束力を持った使用許諾書類の使用目的から大きく逸脱し、法律で相応の罰を与えることができるが、使用許諾書類では「謹慎・停学」といった「校則」の下で罰することを決めている。よって、これらのデータが教師または教育関係者に見つかった場合、彼らや使用許諾書類を発行している学校側の通告を受け入れなければならない。
私はこの1年程それぞれのコンピュータの使用用途を見てきたが、上記の目的を完璧に遵守している者は殆どいないであろう。知っているだけで十数名、話によるとコンピュータ使用者の半数以上がこれを守っていないとのことである(勿論私も例外ではないのだが)。
これらの行為は校則に反しているので全員が処罰を受けて然るべきなのだが、その人数の多さと違法行為ではないことから、教師も精々厳重注意程度で終わらせている。
私はこれらの状況を踏まえた上で、生徒及び学校に向けて、「使用用途」についての反論と「処分」についての具体例を書きたいと思う。
先ず始めに、「使用用途」についてである。
コンピュータ使用者の半数が本来の目的から逸脱した使用をしている現在の状況で、幾らこのようなプリントを配布して注意を促したところで、その効果は焼け石に水程度であると予想される。
これらの個人持ちコンピュータは生徒(またはその保護者)が自分で金を支払って“購入した”物である。つまりこのコンピュータの所有権は出資者である生徒(またはその保護者)にあり、その所有物をどのように使っても全く問題がない筈なのである。リース払いなどのように、全額支払きれておらず所有権が出資者にない場合はこの限りではないが、一括払いに措いては何ら法的に問題はない。
ここからは具体的な使用法についてだ。私がこれまで見てきた本来の目的から逸脱した使用をしているものは主に「ゲーム」「音楽鑑賞」「ゲームサイト閲覧」であり、いずれも娯楽を目的としたものである。
「ゲーム」について。恐らくこれは娯楽以外の何者でもないであろうから、学校が定義する「学習目的以外の本来の目的から逸脱した使用方法」に該当する。これらのゲームを授業中に遊んでいるという話を聞くが、若し本当であればこれは学習を妨げる要因となり、保存や存在自体に問題が出てくる。これは学校という学習の場に措いてその妨げを行うので、十分に校則で処分できる。
「ゲームサイト閲覧・データ再生」について。これも同じく娯楽目的である。そしてインターネットキャッシュや履歴以外には証拠が残りにくく隠滅しやすい。更にクライアント側のコンピュータに負荷が掛かるだけではなく、インターネットを利用することで校内サーバ、地域IP網、プロバイダ、更にはコンテンツを保管しているサーバのその回線に負担をかける。微弱ではあるが、個人ではなく数人、クラス単位、更に言えば学校単位で同時にこのようなゲームで遊ぶことで多大な負担をかけ、他の利用者の迷惑となる。これは学校という学習の場に措いてその妨げを行うだけでなく、多人数同時利用により回線に負担を掛け、他の利用者の迷惑となるので校則で処分し、また学校側もきっちり制限する必要がある。現在接続できている状況より、これは学校側にも不備がある。学校側が注意を喚起しても一向に改善されないのであれば、一般利用客に迷惑をかけないためにも、校内サーバでゲームサイトへの接続を制限するべきである。未だにそれが実行されていないことに措いては、学校側に不備があり、一方的に生徒を責めることはできない。然るべき制限を行ってからこのような注意を行うべきである。
「音楽鑑賞」について。これも娯楽目的ではあるが、学習時にイヤホンやヘッドホンを使用することで学習に集中でき、成績が上がるという「学習能率補助目的」のために音楽鑑賞を行っているとも言えるだろう。イヤホンやヘッドホンを使えば周囲の人間に騒音などの妨害を加えることもない。また音楽を聴くことで音楽についての知識を深め、将来音楽活動をする際への下積みとなる、と考えれば、音楽を鑑賞するという行為そのものが学習となり、十分に学習目的に該当する。よって音楽鑑賞を学習の妨げになるという理由だけで校則で処分することはできない。寧ろ、これによって成績が上がる者がいるのであれば、音楽鑑賞を学校の名の下に推奨すべきだ。
上記の他に娯楽目的であろう行為など挙げれば限がないが、音楽編集ソフトやプログラム作成ソフト、ホームページ作成ソフト等をインストールしていることだけで「学習目的から逸脱している」と言われては、学習も何もあったものではない。音楽学習、プログラム構造学習等といった学習を学校が認めず、国語や英語、数学と言った机上の教科だけを学習と言ってしまうような学校なのであれば、それは学習を推しているのではなく、単なる押し付けがましい不条理な学校である。そもそも机上の教科は将来仕事をしていくため、生きていくために利用できる技術や理論であって、それらを総合的に組み合わせた「生きた学習」を人生の早い間から行っておくことは、将来の仕事や生きることの成功に繋がるということを理解しなければいけない。
上記のような事柄を全て短絡的に「学習の妨げ」としてしまうのであれば、Windowsを使用する際に否が応でも見てしまうデスクトップの壁紙はどうなのか。授業中にコンピュータを使うのだから、授業中にデスクトップの壁紙を見ることはほぼ必然である。それが若し、娯楽などの壁紙であり、それらが学習の妨げ(極端な話が、コンピュータを起動してデスクトップの壁紙に見とれてしまい、学習を全くしなかった、などという場合だ)になった場合、デスクトップの壁紙を変更することすら「本来の目的から逸脱」していることになる。そして教師の一部は、自分で購入せずに学校から“借りている”コンピュータの壁紙を自分の好みの物へ変更している。生徒には「学習目的以外で使うな(ここでは、壁紙を変えるな)」と言うのに、自分たちは購入せずに学校から“借りている”コンピュータを学習目的以外で使っている(ここでは壁紙を変えている)という矛盾が発生している。教師は生徒に物事を教える「規範」となる人物の筈なのだから、その彼らが行っている行動を生徒が真似をすることの何がいけないというのか。
この学校ではインターネットでのトラブルを防止するため、校内ネットワークによるメールや、インターネット掲示板、オークション等にはプロバイダによる制限が掛けられている。このシステムでは教員用と生徒用で接続できるWEBサイトが違うらしく、教員用では生徒用で制限されているサイトへの接続が可能だという。噂によると教員はそれらを私用に使っていることがあるという。これは公務員の職務規定から著しく逸脱していると言える。事実かどうかは学校のサーバのログや、プロバイダのログを調べることによって容易に判断することができるだろう。そして若し、これが事実であれば、校則どころか法律にも違反しているのだ。その様な状況では、教師は生徒にどうこう言える立場にはない。これらを直さない限り、学校側が一方的に「学習用途以外に使用するな」と言うことはできない。
そして「処分」である。学校の言う「学習目的から逸脱した使用」をしている所を見つかった時点で処分が適用されるが、処分の内容が「厳重注意」、「最悪謹慎処分」の程度である。
果たして、これにより何かが解決するのだろうか?
そんなはずはない。
良からぬ事を企む者が、年配の凡人に何を言われたところで改心などするはずがない。大体その程度で改心する者が、良からぬ事を企むはずがないのだ。
このような電子媒体を使いこなす者なら尚更である。人物によっては教師全体の平均よりも頭の切れる者がいるだろう。そして「最悪謹慎処分」ならば、「退学」の心配はないということ。つまり、何度でも同じ違反を繰り返すことが出来る。頭が切れる・切れないに関わりなく、誰にでも容易に何度でも繰り返すことのできる違反なのだ。
ではこのような場合、どのような処分が最も良いのか。答えは単純且つ明快だ。
・コンピュータを取り上げる
非常に手っ取り早く、尚且つ効果的である。コンピュータによる違反であれば、コンピュータがないと出来ない。ならば取り上げるだけ。何と単純であろうか。こんなことを言うと「学習目的での使用時に支障が…」などという声が上がりそうだが、取り上げることによって違反者がどのような被害を被るのか?
授業で必要ならば代替のコンピュータが支給されるであろうし、取り上げたコンピュータを一時返却する事も出来るだろう。学校側は「学習目的以外の使用」を禁止しているのだから、休み時間には必要ないだろうし、個人の課題が出来ない場合は、その個人の自業自得である。グループでの課題が出ているならば、グループのメンバのコンピュータを借りれば良いだけの話だ。
つまり、個人持ちコンピュータを取り上げた所で、実質何の被害もないのだ。学習目的に支障を来たす事もない(コンピュータは有り余っている筈だ)。学校側には、違反者の個人持ちコンピュータの一時若しくは無期間の預かり、といった処分を与える事を推奨する。
また、現在の処分内容では「学習目的以外の使用を行っている場合は処分」という曖昧な規定なので、これを明確にすべきである。教師個人の判断で処分を行っていれば、同じ違反を行っていても処分内容が異なってくる。「○○ということをしていた場合は××、□□ということをしていた場合は△△」というように、違反内容と処分内容を明確にしそれらを対応させ、それを生徒に伝えるべきだ。これならば非常に公平であり、端的であり、明確である。
これらの項目には「最悪然るべき機関へ届け出る」という事も含める必要があるだろう。コンピュータを使用すれば、年齢・体格・身分関係なく、容易に犯罪を犯すことができる(知的財産権の侵害などが良い例だろう)。若し校内の人間が、コンピュータによる触法行為を行った場合は、警察等の専門機関へ通告する、と規定して、校内で揉み消されないようにする。あらゆる年齢の違反を潰していかないと著作権法違反など無くならない(この点で著作権法などの知的財産を保障する法律も至る所に欠陥が見られるが、今回は割愛する)。
スポーツ用品をインターネットで検索して談議を行うことは学習目的という捉え方をされ、音楽関連は娯楽と捉えられるのは如何なものか。何処から何処までが学習であり、娯楽であるかが判らない儘にコンピュータを使用しているのが現状だ。
「学習」とは何かを的確に把握し、それが何であるかを生徒に伝え、然るべき制限と許容と処分を与える。これが今この学校が行わなければいけないことである。そして、それが出来ていない現状では、生徒がPCをどう使おうが、それは生徒個人の所有物なので、注意することはできない。
何よりも、この程度のことで教師はとやかく言うべきではない。頭の良い人間はコンピュータが学習の妨げになろうが頭は良いのだし、頭の悪い人間はコンピュータがなくても学習の妨げになる何らかの要素を持っているのだから。そして、若し本当にコンピュータの使用が原因で学力が低下したというデータが存在しているのなら、上記のような具体的な処分を適用するか、コンピュータの使用をやめるべきである。